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掲載日 : 2021.04.01 / 最終更新日 : 2025.05.08
社会保険ワンポイントコラム

2021年4月1日から、同一労働同一賃金を定めた働き方改革関連法案が中小企業でも適用されます。そもそも同一労働同一賃金とは何か、会社は具体的に何をしなければいけないのか、何に注意しなければいけないのかを、改めて確認しておきましょう。
大企業では2020年4月1日から、中小企業では2021年4月1日から、正社員と非正規雇用労働者(短時間労働者・有期雇用労働者)の間の不合理な待遇差の解消が求められます。これが、いわゆる「同一労働同一賃金」と呼ばれるものです。
これに伴い、会社が求められることは以下の2点です。
つまり、正社員と非正規雇用労働者の間で不合理な待遇差を設けてはならず、合理的な差を設ける場合にもその理由を説明できるようにしておかなければならないということです。
さらに、今回の法施行により、上記①②に対して、行政による助言・指導や、裁判外紛争解決手続の整備がされます。これにより、同一労働同一賃金の対応に問題があれば行政による指導が入るほか、トラブルに発展する場合には、都道府県労働局における紛争解決手続の対象になります。
その待遇が不合理かどうかを判断する際には、正社員と非正規雇用労働者の間で、下記3点に違いがあるかがポイントになります。
これら3点の違いの範囲内で従業員の待遇を決める必要があり、中でも、正社員と非正規雇用労働者の間で①と②がともに同じ場合には、すべての待遇について、差別的に取り扱うことが禁止されます。つまり、単に「パートだから」「有期雇用だから」という雇用形態上の理由だけで待遇差を設けてはならず、仕事の内容が異なる、転勤の有無や範囲が異なる、といった具体的差異に応じて、待遇を決定しなければならないということです。
従業員から待遇差の説明を求められた場合には、会社はそれに応じなければなりません。その際に気をつけたいことは、具体的に説明をする、ということです。先述の通り、「あなたはパートだから」等の説明では具体的で合理的な待遇差の説明とは言えません。 正社員と仕事内容にどのような違いがあるのか、異動や昇進の範囲がどう異なるのか等、具体的に何が異なるのかを説明する必要があります。その際、労使間で認識の齟齬が起きないよう、書面を作成しての説明が有効です。厚生労働省が説明書のモデルを公開していますので、そういったものを利用して、合理的な差異を説明できるようにします。説明を求められた時になって慌てないよう、あらかじめ書面を作成しておき、真摯に対応することが重要です。
もちろん、待遇差の説明を求めた従業員に対し、そのことを理由として不利益な取り扱いをすることは禁止されていますので、その点もご注意ください。
自社で対応が必要なのかどうか、簡単な質問を用意しました。同一労働同一賃金に関する法律は、既に施行されている法律です。対応の要否を早めにチェックし、自社に合った正しい対応をしていきましょう。
はい:次の質問へ
いいえ:対応の必要はありません。将来雇用の予定がある場合には、事前に準備をしておきましょう。
はい:次の質問へ
いいえ:今すぐ対応すべき課題はありません。
はい:労働者から説明を求められたときに、待遇差の内容や理由を説明できるよう情報をまとめておきましょう。
いいえ:待遇差が不合理であると判断される可能性があるので、不合理な待遇差の改善に向けて、取り組みを進めましょう。
どのような対応が必要かは、会社によって異なります。なぜなら、会社によって労働条件や雇用形態が異なるからです。そのため、他社の事例をそのまま移植することは危険を伴います。
厚生労働省には同一労働同一賃金の専用ページがあり、様々なツールの提供や、解説資料が掲載されています。先述の説明書のモデルもこちらのページに記載があります。また、同ページには無料の相談先(働き方改革推進支援センター)の紹介もありますので、何から手をつけていいかわからないという方は、このような相談先を利用するのも良いでしょう。
同一労働同一賃金の対応は、それぞれの事情に応じて、労使で十分な話し合いをしていくことが望まれます。対応が大変だと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、計画的に適切な対応をしていきましょう。
内川真彩美
いろどり社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 / 両立支援コーディネーター
成蹊大学法学部卒業。大学在学中は、外国人やパートタイマーの労働問題を研究し、卒業以降も、誰もが生き生きと働ける仕組みへの関心を持ち続ける。大学卒業後は約8年半、IT企業にてシステムエンジニアとしてシステム開発に従事。その中で、「自分らしく働くこと」について改めて深く考えさせられ、「働き方」のプロである社会保険労務士を目指し、今に至る。前職での経験を活かし、フレックスタイム制やテレワークといった多様な働き方のための制度設計はもちろん、誰もが個性を発揮できるような組織作りにも積極的に取り組んでいる。