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2023.09.20税務ニュース
令和5年10月1日から、 いよいよインボイス制度がはじまります。
今回は前編として、インボイス制度開始直前だからこそ再確認しておきたいスピードチェックと題して、 ポイントだけを絞って簡潔にご説明します。 また後編では、制度の運用を通じてどんな課題が生じやすいかといった、現場のあるある等をご紹介したいと思っています。
インボイス事業者の登録申請をすると、税務署から通知書が発行され、適格請求書発行事業者番号を確認できます。申請後にまだ番号の確認していない方は、インボイスへの記載が必要ですから、早めに確認をしておきましょう。法人の場合、国税庁のWebサイトで「適格請求書発行事業者公表サイト」を閲覧し、法人番号を入力することで確認することができます。個人の場合には検索に手間がかかるので、通知書での確認がおすすめです。
今まで発行していた請求書のフォーマットに、加える事項、修正する事項があります。インボイスの要件を満たすには、下記の記載が必要になります。
また、気をつけたいのは消費税の端数処理です。1枚の請求書につき、端数処理は1度しかしてはいけない、のがインボイスです。品目別に消費税を計算せず、合計額に消費税を乗じることになりますから、修正が必要な場合には早めにチェックしておきましょう。
実は、事業者によって受領しなければならないインボイスが異なります。消費税の計算方法で簡易課税を選択している事業者であれば、そもそもインボイスが無くてもこれまで通りに消費税の計算ができます。下記の①~⑤の取引はインボイスの受領は不要、帳簿への記載のみで仕入税額控除が認められます。
また令和11年9月30日までの6年間限定ですが、基準期間(2年前事業年度)の課税売上高が1億円以下、あるいは特定期間(前事業年度の前半)の課税売上高が5000万円以下なのであれば、取引金額税込1万円未満のインボイスの保存は不要です。
現在行われている取引を俯瞰してみて、インボイスが必要な取引と不要な取引をグループ分けしてみると、どのくらい事務負担が増えるのかがわかります。事務負担が膨大なら、今から簡易課税を検討するという手もあります。
インボイス情報を提供する、提供してもらう、ことは事前に行っておきたいところです。インボイス番号をお知らせするだけでなく、インボイスの役割を果たす書類は何か、紙で発行してくれるのか、電子でやりとりをするのか等を共有することで、インボイス制度開始後の混乱を回避できます。
場合によっては、請求書だけではインボイスの要件を満たしておらず、日々の納品書を含めた複数の書類をインボイスと位置づけていれば、受け取った側も複数の書類の保存が必要です。あるいは、支払通知書などを発行する場合には、発行側があらかじめインボイス番号を入手する必要がある等、各社で準備が進められています。
免税事業者からはインボイスは受領できず、インボイスが受領できなければ税額控除もできないのが原則です。ところが制度開始から6年間は経過措置が適用されるため、免税事業者への支払でも一部税額控除が可能です。具体的には、令和5年10月1日から令和8年9月30日までは、仕入税額相当額の80%を仕入税額とみなし控除が可能、令和8年10月1日から令和11年9月30日までは、仕入税額相当額の50%を仕入税額とみなし控除が可能です。
この経過措置を適用するためには、免税事業者から区分記載請求書を受領すること、また経過措置を適用している旨を帳簿に記すことが要件です。ですから、対象になりそうな免税事業者には、区分記載請求書の要件を満たす請求書の発行を促す必要があります。
区分記載請求書の記載事項は下記の通りです。
上記のような事前準備をスピードチェックして、あとは実際にスタートしてから不備を補っていくようなイメージで良いと思います。次回は、制度開始後の現場のあるあるについてです。お楽しみに・・・!
税理士 うばとしこ
税理士。大学卒業後、大手リース会社の営業職、税理士事務所への転職、結婚、出産を経て、2016年4月に税理士登録、2017年11月に独立開業。主に法人税務顧問のほか個人事業主を対象とした経理サポートのオンラインサロン「ゆるふわ経理部」を主宰。YouTube「ゆるふわチャンネル」での発信活動、全国各地の商工会議所や法人会、その他上場企業からの直接オファーで年間約50本のセミナー講師を務める。各種媒体への執筆活動は多数実績あり。2022年6月「経理マインドの強化書」出版/中央経済社、2023年5月「図解と会話でまるわかり!インボイスと消費税がすべてわかる本」出版/ソーテック社
「経理マインドの強化書」出版/2022年6 中央経済社
「図解と会話でまるわかり!インボイスと消費税がすべてわかる本」出版/2023.5 ソーテック社