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2023.01.01税務ニュース
年明け、還付申告を予定している人は多いでしょう。「申告は2月16日以降」と思っているかもしれません。実は、還付申告は年明け1月1日からできます。申告できる期間も長いのが特徴的ですが、うっかりすると損をすることも。今回は、還付申告の内容と注意点をお伝えします。
還付申告とは、源泉徴収や予定納税で納め過ぎた税金の一部を還付してもらうための確定申告をいいます。
「国民自らが所得と税額を申告し、納税をする」というのが、日本の税金の原則です(申告納税制度)。しかし本当に国民全員が自ら申告すると、税務署の作業が膨大になり、徴税コストがかさみます。また、一度に多額の納税は、納税者自身にも負担です。
そこで、給与や年金、報酬などの支払から所得税を天引きしたり(源泉徴収)、ある程度所得のある人は税金の一部を前払いしてもらったり(予定納税)しています。ただし、先払いした所得税が本来かかるべき税額よりも多くなることがあります。確定申告をすれば、この払い過ぎた所得税が一部戻ってくるのです。
還付申告できるのは「納め過ぎた所得税のある人」です。つまり「今年の1月1日から12月31日まで、すでに納めた所得税がある」状態が前提となります。
具体的には、次のような人が「すでに納めた所得税のある人」です。
「給与年収103万円以下のバイトやパートは所得税が天引きされていない」と言われがちですが、これは扶養控除等(異動)申告書を出しているときの話です。この書類を提出していないのなら、少額の所得税がバイト代やパート代から源泉徴収されています。
還付申告で比較的多いのが、次の事情による還付です。
自分と家族の年間医療費が「10万円」「総所得金額等×5%」のいずれか低い方を超えたときに受けられる所得控除です。治療費や薬代などの一部が所得から差し引かれます。
自分や生活を共にする家族の自宅や家財が台風や大雨、地震などで被災して損壊したときに受けられる所得控除です。修繕費などの一部が所得から差し引かれます。
ふるさと納税は、地方自治体に寄附をしたときに受けられる所得控除です。寄附先の自治体が5つ以下となるサラリーマンや年金生活者は、ワンストップ特例を使うことが多いかと思います。ですが、次のいずれかに当てはまると、ワンストップ特例は使えず、確定申告をすることになります。
ふるさと納税の確定申告をすると、「寄附金控除」として所得から寄附した金額の一部が差し引かれます。
この他、「年末調整での申告もれがあった」「退職後、再就職せずに年を超した」「株式譲渡の損益通算をしたい」「事業収入や家賃収入が前年より減った」といったときも還付申告になりやすいです。
還付申告で最低限必要なのは、次の2つです。
還付申告だからといって、特別な書類が必要なわけではありません。通常の所得税の確定申告書を使います。なお、上記以外の添付書類は、還付申告の内容によって変わります。
還付申告ができるのは、申告対象となる年の翌年1月1日から5年間です。2022年分の還付申告を行うなら、2023年1月1日から2027年12月31日まで可能です。
還付申告には、次のような注意点があります。
誤解が多いのが「還付申告をすればお金が戻ってくる」です。くりかえしになりますが、すでに納めた所得税がなければ、申告書を提出しても還付されません。
「収入源は勤務先からの給料だけ」といったケースなら、申告して還付になることが多いです。ただ、副業による収入が多い場合、他に控除があったとしても還付になるとは限りません。計算の結果、還付になるなら還付申告に、納税になるなら通常の確定申告です。通常の確定申告なら、申告期限は翌年3月15日となります。
還付申告になる人の中には青色申告を行うケースもあるでしょう。青色申告のうち、65万円・55万円の特別控除の対象者は、申告期限に注意しなくてはなりません。翌年3月15日までに申告しないと、控除額が10万円に減ってしまいます。
還付申告は5年間できますが、遅すぎる申告だと住民税の手続きが面倒です。「徴収金の過誤納の還付」という手続きを別途、市区町村で行うことになります。住民税のことを考えるなら、還付申告でもできれば3月いっぱいに済ませておきたいものです。
税理士 鈴木まゆ子
税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、マネーの達人、朝日新聞『相続会議』、KaikeiZine、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)。