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ソリマチの経営応援通信
あなたの知らない領収書の世界

2020.09.15税務ニュース

あなたの知らない領収書の世界

領収書の魔力

「領収書をください。株式会社ABC商事で。」

休日のお昼時、レジ前での会話です。家族連れ三人は休日にファミリーレストランでランチを楽しんでいた様子でした。この領収書は会社で精算して、税務上の経費として利益から控除するために使うのでしょうか?家族の食事代の領収書?疑問が生じます。経費というのは売上を上げるためにやむを得ず支出したもののはずなので、家族での食事が経費になるというのはどういう理由からでしょうか。

一つ考えられるのは、明日への活力。家族でおいしいものを食べて、明日からの仕事を頑張ろう!という気分にするための必要な支出という理由です。なんとなく、もっともな理由にも思えますが、このような理由ではもちろん経費としては認められません。でも、不思議と“領収書”があるとまかり通るような気もします。なぜでしょうか。それは領収書には魔力があると人々が信じているからです。その魔力とは、領収書があれば会社の経理も税務署も、これを経費として認めてくれるという一種の信仰的な気持からです。神話は本当に健在なのでしょうか?

上様領収書の上様って何様?

時代劇をみると出てくるのが“上様”。将軍や大名など身分の相当高い人に対する尊称です。現代においては、身分制度が廃止されていますので上様なる存在はないのですが、不思議なことに領収書の世界ではいまだに“上様”が存在しています。領収書の記載事項は、

  1. 領収者の氏名や会社名
  2. 領収した日
  3. 品目など領収の内容がわかるもの
  4. 宛名

宛名のだれがお金を払ったかというのは、とても重要な情報です。その領収書を所持している人が、お金を支払ったとは限らないのです。しかし、宛名不明な“上様”領収書は世の中には数多く存在しています。

では、上様領収書はそもそも法的に有効なのでしょうか?個別の会社で見てみると、サラリーマンが会社の経費としてお金を支払った時に上様領収書をもらい、それを会社に精算してもらうということは、ほぼ不可能だと思います。会社のために支出したかどうかを証明することができないためです。

では、自営業者や中小企業の経営者などはどうでしょうか?かれらは社内のだれかに経費であることを認めてもらう必要はない立場の人たちです。彼らの領収書をチェックするのは、基本的には税務署だけです。税務署の調査官が上様領収書を認めるかどうかは、税法の規定に従って判断します。会社であれば法人税法、個人事業であれば所得税法などの税法がそれにあたります。

結論から言うと、法人税法や所得税法などに「上様領収書を認めない」という規定はありません。それら税法では、その支払いの事実があれば認めるというスタンスで規定されています。そのような理由から、上様領収書で構わないと考える方も多いと思いますが、そうはいきません。領収書の記載事項を定めている税法があるのです。それは消費税法。消費税は、自分がもらった消費税と自分が支払った消費税の差額を納税するのが原則です。この消費税法においては、領収書や請求書の記載事項で宛名を明確にしておかなければ、支払った消費税の控除を認めないという規定になっているのです。消費税の規定からだけではなく、調査官に怪しまれないためにも領収書の宛名は、しっかり記載してもらいましょう。

魔力が消えるとき

ここで税務調査の場面。調査官が難しい顔をしながら経理担当の社長の奥さんに領収書の内訳を示しながら

「奥さん、ここの会議費ですが、だれとなんの会議をしたのかわかりますか?」
「いえ。私は現場にいなかったので詳しくは社長に聞いてください」
「あとで社長にもお聞きしますが、この時お子様ランチを食べたのはだれですかね?」
「・・・」

最初の場面です。どうやら調査官はレストランに行って領収書の内容を確認したようでした(最近のレジシステムは領収書番号などで取引内容を確認できるものがあります)。お客様や取引先に小さな子供がいて、その子も一緒にランチに行っていたという状況はなくもないですが、それは特殊なケースです。常識的に考えて、お子様ランチが記載されているということは、家族で食べに行ったものを会社の経費に無理やり付けたと考えられます。領収書の魔力が消えた瞬間でした。

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