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2022.09.22起業応援・創業ガイド
法人設立したら、関係があるのは法人税や地方税だけではありません。「社会保険」についても知っておく必要があります。今回は、法人の社会保険の加入要件や加入手続きについてご説明します。
法人設立して、社長が1人しかいない会社であっても、法人の社会保険(健康保険/介護保険/厚生年金)は強制加入です。法人の社会保険の加入は、選択の余地があるものではなく、お給料を払う会社は加入する義務があります。
法人の社会保険の加入対象は以下の通りです。
役員や従業員は常時雇用しているのであれば、社会保険に加入しなければなりません。しかし、労働時間が短いパートやアルバイトであれば、加入要件に該当しない限りは加入しなくても構いません。
法人の社会保険の加入は強制加入ですが、会社を設立したばかりで、役員報酬をゼロに設定する場合は、例外となります。そもそも、社会保険料を徴収する元手が存在しないため、社会保険は非加入になります。
この場合、法人で社会保険に加入しない場合でも、個人では「国民健康保険」や「国民年金」には加入しているはずです。
社会保険に加入するべき法人が、社会保険に加入していない時、または、加入要件を満たす従業員を加入させない場合には、罰則が適用されることがあります。
社会保険の加入対象となっている未加入事業所の中でも特に悪質なケースと認定されてしまうと、健康保険法第208条により、6ヶ月以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金が課されることがあります。
また、過去2年分の未加入を追徴されたり、従業員から損害賠償請求を受けたりした事例もあります。
※悪質なケースとは、複数回にわたる加入指導を無視した場合や、事実と異なる虚偽の事実を申請した場合などを指します。
社会保険(厚生年金と健康保険)の加入時に必要な手続きは以下の通りです。
社会保険に加入するには、まず加入に必要な書類(下記提出書類参照)を管轄の年金事務所(日本年金機構)へ提出することが必要です。
上記1から4の必要書類は、日本年金機構のホームページからダウンロードすることもできます。
社会保険の加入は、提出書類を郵送または窓口に持参して行います。提出期限は、会社設立後5日以内、被保険者の資格取得から5日以内です。
社会保険料は、月の途中や月末に加入をされた場合でも1ヶ月分の保険料がかかります(日割り計算は行いません)。また、社会保険料は毎月納付を行います。
社会保険料を支払うのは、会社が一括で行い、その負担は、会社と加入者を1/2ずつ負担となります。加入者(役員や従業員)の負担分は毎月の給料から天引きしなければなりません。また、会社負担分については、法人の経費となります。
ここまで法人が設立したら、必ず加入することになる社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金保険)についてご説明してきましたが、従業員(役員は除く)が加入するものに、雇用保険と労災保険があります。この2つをあわせたものが労働保険です。
雇用保険とは、従業員や失業した場合などに生活の安定や再就職の促進を目的とした給付が行われる保険制度です。代表的なものとして、失業給付や再就職手当金、育児休業給付金や介護休業給付金などがあります。
また、資格取得や講座受講などを支援する給付金などもあります。
雇用保険の基本的な加入要件は以下です。
保険料は、従業員が支払われる賃金の0.3%、会社が0.6%を負担します。
労災保険とは、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に対して労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度です。労災保険は業務中や通勤中の事故や災害を原因とする場合にのみ適用される保険です。
労働保険は、政府が管掌(管理、運営)している強制的な保険です。したがって、原則として労働者を一人でも雇っていれば加入しなければなりません。保険料は全額会社負担となります。
雇用保険の加入要件を満たす従業員を初めて雇い入れることとなった場合は、事業所を管轄するハローワークに下記の書類を提出します。
保険関係が成立した日の翌日から10日以内です。
※雇用保険被保険者資格取得届は、被保険者となる従業員を雇い入れる都度、ハローワークへ提出する必要があります。
管轄の労働基準監督署へ下記の書類を提出します。
書類の提出は「労働保険 保険関係成立届」が成立した日から10日以内。
「労働保険概算・確定保険料申告書」は、保険関係成立の日から50日以内に提出。
今回は、法人の社会保険(健康保険と厚生年金と介護保険)と従業員を雇ったら関係してくる社会保険である労働保険(労災保険と雇用保険)についてまとめてみました。
社会保険は、会社で働く人役員や従業員が、病気や怪我をした時、労働時間中に災害にあったとき、退職や失業による無収入などから守ってくれる大切な制度です。基本的なことはしっかりとおさえておきましょう。
税理士 吉村知子
ビジネス拡大のため、開業してから法人化を目指す個人事業主や法人のための税理士として、ともにビジネスの飛躍を目指す経営のサポートを行う。また、法人や個人事業主の顧問契約だけでなく、個人事業主向けの講座を開講。確定申告をゴールとしながら、経営者として必要となるお金の知識を学ぶオンラインプログラムが大好評。